愛しいオムライス

幼い頃から、オムライスが好きではなかった。

 

チキンライスより白いご飯が好きだし、

卵は黄身より白身が好き。

たいして好きじゃないもの二つの組み合わせを、

愛せるはずがない。

 

ただ、オムライスを美味しそうに頬張る女の子は、

可愛いと思ったから、

二十歳(はたち)を過ぎた頃から、

たまに食べるようになった。

特に男の人の前で、満面の笑みで。

 

「オムライスを幸せそうに食べるわたし、

           すっごく可愛いでしょ?」

なんて考えながら頬張るオムライスは、

全然美味しくなくて、

オムライスという食べ物が、

どんどんどんどん苦手になっていった。

 

数ヶ月前のあるお昼、仕事の打ち合わせの合間に、

ひとつ年下の男の子とオムライスを食べる機会があった。

 

隣で元気にオムライスを頬張る彼は可愛くて、

わたしは自然と笑顔になっていた。

作り笑いではない笑顔でオムライスを食べるのは、

何年ぶりだろう。もしかしたら人生かもしれない。

 

f:id:demicious:20180305225548j:plain

 

ちょっと残してしまったオムライスは、

彼が「いいんですか?」と言いながら、

なんなくたいらげた。

 

オムライスが愛しい食べ物になった日だった。

 

東京 銀座『喫茶YOU』

ランチセット(オムライス)1,100円

www.facebook.com